止まない雨

essay1.jpgこの世の中に 降り止まない雨は無いと言うが
私の心の雨は何時になったら降り止むのだろうか・・・・
私には未だに癒えない心の傷があり
それはひび割れた石榴の果実のように 触れれば触れるほど
暖めれば暖めるほど 赤い汁を流す。

ここには私と同じ何か…を持つ人達が集まっていた。
私がいつかSMを辞める日が来ても
この果実の匂いが私から消える事は無いように思う。

その日は月に二、三度私の元へおとずれる客が最初の仕事だった。
私は彼の鞭で腫れた背中を爪で引っ掻き回し、さらに傷口に塩を塗りこんだ。
プレイルームに響き渡る悲鳴。
うるさいとは思わなかった。むしろ、不満や怒りを口にしないM男に対して
愛おしさとある種の尊敬の念が沸いた。

私はただ一度、元婚約者(今では全く関わりの無い人です)に
Sを演じてもらった事があった。
私は、されている行為自体ではなく、とにかくどんな事であろうと
自分の愛する人が 自分に目を、手を、意識を向けてくれていると言うことが
ひたすら嬉しかった。

お客である彼は痛みにはごく人並みに反応する。
痛み自体が純粋に好きなタイプのMでは無い。
彼の口癖は、「ご満足していただけましたでしょうか?」だ。

相手に喜んで欲しい。
相手のどんな行為も受け入れることで、自分の相手への愛の深さを表現する。
そして逆に、そのような行為を受け入れる自分を、体ごと愛して欲しい
褒めて欲しい。認めて欲しい。満足してもらう代わりに笑って欲しい・・・

純粋にて歪んだその悲しい思いを、私は彼からひしひしと感じていた。

私は彼を後ろから抱きしめて無言で肩をなでた。
彼は完全無防備な顔で、私と居られる時間一杯まで微動だにせず黙っていた。

飴と鞭と言われるSMの中で、一番のご褒美とは なんだろう?

私だったら「愛してもらう事だ。」と即答する
それは私にとって、SMに限った事ではない。
プレイ後、彼は笑いながらこう言った。

「私、実はね、家では家事とか一切手伝わないんですよ」と。

彼は強くて優しい 父親の顔に戻っていた。

2001/9